食べ終わりにできる食育:かたづけを通して学ぶ食と環境の大切さ
日々の食事は、私たちの体をつくる大切な時間です。そして、食事が終わった後の「かたづけ」もまた、食や環境について学ぶ貴重な機会となり得ます。忙しい毎日の中で、食後のかたづけは時に負担に感じられるかもしれません。しかし、少しの意識と工夫によって、子どもたちと一緒に食卓の後片付けを通して、食べ物への感謝や環境への配慮を学ぶことができます。
食事の終わりから始まる学び
食後のかたづけは、単に汚れを落とす作業ではありません。そこには、食べ物を無駄にしない工夫、資源を大切にする意識、そして使ったものへの感謝といった、食育と環境教育の要素が詰まっています。子どもと一緒にこれらの作業を行うことで、子どもたちは自然と食と環境のつながりを感じる機会を得られます。
食べ残しを減らす意識を育む
かたづけの前に、まず食卓で大切なのは「食べ残しを減らす」という意識です。これは、世界的な課題であるフードロス削減に直結する行動であり、食料を生産し、流通させるために費やされた資源(水、エネルギー、労力など)への配慮でもあります。
- 適切な量の盛り付け: 子どものお腹の空き具合や好みに合わせて、無理なく食べきれる量を盛り付ける工夫が大切です。
- 「食べきろうね」の声かけ: 食事中に、残さず食べることを優しく促す声かけは、食べ物を大切にする気持ちを育みます。
- 残った料理の扱いを考える: もし食べ残してしまっても、すぐに捨てずに保存したり、アレンジして別の料理に活用したりする方法を子どもに見せることは、食べ物を無駄にしない知恵を伝えることになります。
洗い物から学ぶ水と洗剤の知恵
食器洗いは、水資源の利用と排水が環境に影響を与える身近な例です。
- 水の節約: 流しっぱなしにせず、桶にためて洗う、すすぎはため水で行うなどの工夫は、水道水の使用量を減らすことにつながります。子どもには、蛇口から水が流れ続ける様子と、コップ一杯分の水の量を比較して見せるなど、水の有限性を感覚的に伝えることもできます。
- 洗剤の選び方と使い方: 環境負荷の低い洗剤を選ぶことや、適量を使用することは、排水による環境への影響を軽減します。洗剤の泡が排水口から自然に分解されていく仕組みなどを簡単に説明するのも良いでしょう。油汚れのひどい食器は、キッチンペーパーなどで拭き取ってから洗うことで、使用する水の量や洗剤の量を減らすことができます。
- 子どもと一緒にする: 子どもに割れにくい食器を運んでもらったり、泡を流す簡単なすすぎを手伝ってもらったりすることで、かたづけへの参加意識を高めることができます。
生ごみ処理から学ぶ循環
食後の生ごみは、適切に処理されないと環境に負荷をかけます。しかし、これを資源として捉えることで、循環を学ぶ機会となります。
- 水切りを徹底する: 生ごみの約80%は水分と言われています。水切りをしっかり行うことで、焼却時のエネルギー消費を減らし、ごみの減量や悪臭防止にもつながります。水切りネットを使う、乾燥させるなどの方法を子どもと一緒に試すことができます。
- 分別を意識する: 食材のくず、食べ残し、食品パッケージなど、ごみの種類によって分別方法が異なります。なぜ分けるのか、それぞれがどうなるのか(燃えるゴミになる、リサイクルされる、堆肥になるなど)を簡単に説明することで、ごみ問題への関心を育みます。
- 生ごみコンポストへの関心: 家庭で生ごみを堆肥に変えるコンポストは、食べ物の「いのち」が土に還り、新たな食べ物を育むための栄養となる「循環」を学ぶ素晴らしい方法です。すぐに実践できなくても、「生ごみは土の栄養になるんだよ」と話すだけでも、子どもにとって大きな気づきとなります。
食器や道具を大切に使う心
食卓で使った食器や道具を丁寧に洗い、大切に扱うことは、ものを使い捨てにしないという環境への配慮につながります。お気に入りの器を洗う際に「いつも美味しいご飯をありがとう」という気持ちを持つことや、古くなった道具を修理して使う知恵なども、子どもに伝えたい価値観です。
まとめ:小さなかたづけから広がる食育
食後のかたづけは、日々のルーティンの中に組み込みやすい食育と環境学習の機会です。完璧を目指す必要はありません。食べ残しを少し減らしてみる、水を大切に使ってみる、ごみの分別を丁寧に行ってみるなど、できることから一つずつ始めることが大切です。
子どもと一緒に手を動かし、対話を重ねる中で、「食べ物への感謝」「資源の大切さ」「環境への配慮」といった大切な価値観は育まれます。忙しい毎日だからこそ、食の終わりにほんの少し時間をかけて、子どもたちと地球に優しいかたづけに取り組んでみてはいかがでしょうか。