食べ物をつくる人への感謝を育む食育:子どもと学ぶ食と社会のつながり
毎日の食卓に並ぶ食べ物は、どのようにして私たちの手元に届くのでしょうか。 supermarketに並ぶ色とりどりの野菜や果物、お肉やお魚、パンやお米など、それぞれの食べ物には、それを育てたり、獲ったり、運んだり、加工したりする多くの人々の営みがあります。食育において、子どもたちに食べ物への感謝の気持ちを育むことは非常に重要であり、その感謝の気持ちは、単に「おいしい」と感じる以上の深い学びにつながります。食べ物に関わる人々の存在を知ることは、子どもたちが食を通して社会の仕組みや環境とのつながりを理解する第一歩となります。
忙しい日々の中で、子どもにこうした学びをどのように伝えれば良いのか、具体的な方法が分からないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特別な準備や時間をかけなくても、日々の暮らしの中で実践できる簡単な方法があります。この記事では、子どもと一緒に食べ物に関わる人々に思いを馳せ、感謝の気持ちを育むための具体的なヒントをご紹介します。
食べ物が食卓に届くまで:様々な「つくる人」「届ける人」
私たちが普段口にする食べ物は、非常に長い道のりを経て食卓にたどり着きます。まず、自然の中で種を蒔き、愛情込めて野菜や果物を育てる農家さん、海や川で魚や貝を獲る漁師さん、牛や豚、鶏などを育てる畜産家さんがいます。これらの「生産者」と呼ばれる方々は、天候や自然の状況に左右されながら、私たちの食べるものを作り出しています。
生産者の方々が作った食べ物は、選別され、パック詰めされ、遠く離れた場所に運ばれることもあります。そこには、トラックを運転する人、空港や港で荷物を扱う人などが関わっています。そして、お店に並べられ、私たちが手にとって購入できるようになります。お店で働く人も、新鮮な商品を並べたり、お客さんの対応をしたりと、食べ物が私たちの手元に届く上で欠かせない存在です。
さらに、購入した食材を洗ったり切ったり、調理したりして、食卓に並べてくれる人もいます。家庭であれば、多くの場合お父さんやお母さんがその役割を担っています。このように、一口の食べ物の裏側には、実に多くの人々の力と知恵、そして手間がかけられているのです。
子どもに「ありがとう」を伝えるためのヒント
子どもに食べ物に関わる人々の存在を伝え、感謝の気持ちを育むためには、日常生活の中でのさりげない働きかけが効果的です。
絵本や図鑑を活用する
食べ物がどのようにして作られるか、働く人々が登場する絵本や図鑑は、子どもにとって非常に分かりやすく、興味を引きやすいツールです。「これ、畑で農家さんが一生懸命育てたんだって」「この魚は、海で漁師さんが船に乗って獲ってくれたんだね」など、絵本の内容に沿って語りかけることで、子どもは自然と食べ物に関わる人々の存在を認識し始めます。
食卓での会話で伝える
食事中に、食べ物について会話する時間を持ちましょう。「このりんごは、遠い町の農家さんが作ってくれたものなんだよ」「今日の〇〇(料理名)に入っているお野菜は、太陽の光をたくさん浴びて大きくなったんだね」といった簡単な言葉で、食べ物の背景にある物語を伝えます。誰かが作ってくれたもの、自然の恵みであることを意識させることで、感謝の気持ちが芽生えます。
食材のパッケージを見てみる
supermarketで購入した食材のパッケージには、生産地や生産者の名前、あるいは品質に関する様々な情報が記載されていることがあります。子どもと一緒にパッケージを眺めながら、「これはどこで作られたんだろうね」「このマークは何かな?」などと話してみましょう。具体的な情報に触れることで、食べ物がどこから来たのか、誰が関わっているのかという疑問が生まれ、関心を深めるきっかけになります。有機JASマークや特定の認証マークがあれば、それがどのような意味を持つのかを簡単な言葉で説明することも、環境への配慮といった広い視点に繋がります。
簡単な役割体験を取り入れる
もし可能であれば、地域の直売所や農園での収穫体験に参加してみるのも良い経験になります。土に触れ、自分で収穫する喜びを知ることで、食べ物が自然の恵みであり、多くの手間がかかっていることを肌で感じることができます。体験が難しければ、家庭菜園で簡単な野菜を育てたり、おままごとやお店屋さんごっこで「つくる人」や「売る人」の役割を演じてみたりするのも、学びを深める工夫となります。
感謝の気持ちが育むもの:食べ物への敬意と環境への配慮
食べ物に関わる人々への感謝の気持ちは、単に礼儀作法を学ぶだけでなく、子どもたちの心の中に「食べ物を大切にしよう」という敬意を育みます。この敬意は、偏食や好き嫌いを減らすことにつながる可能性がありますし、食べ残しをなくそうという意識(フードロス削減)にも自然と結びつきます。
さらに、食べ物を作る人々の努力や、それが自然の恵みによって成り立っていることを知ることは、環境への配慮にもつながります。例えば、農家さんが土を大切に育てていること、漁師さんが海の資源を守りながら漁をしていることなどを知れば、食料生産と環境が密接に関わっていることに気づくきっかけとなります。持続可能な生産方法で作られた食べ物や、地元の食材を選ぶといった行動は、食に関わる人々への感謝と、未来の環境を守りたいという気持ちから生まれてくるものと言えるでしょう。
まとめ
日々の食卓は、子どもたちにとって食の楽しさを学ぶ場であると同時に、世界とのつながりを知る大切な学び舎です。「いただきます」「ごちそうさま」という言葉には、食べ物そのものへの感謝だけでなく、それを作ってくれた人々、命を育んでくれた自然への感謝の気持ちが込められています。
忙しい中でも、絵本の読み聞かせや食卓での短い会話、食材のパッケージ観察など、日常生活のちょっとした瞬間に、食べ物に関わる人々の存在について話してみてください。完璧を目指す必要はありません。子どもたちの「これ、どうやってできるの?」という素朴な疑問に一緒に向き合い、食べ物と人、食と社会、食と環境のつながりを、親子のペースで探求していくことが大切です。この小さな積み重ねが、子どもたちの豊かな心を育み、食べ物を取り巻く様々なことへの関心を広げていくことでしょう。