キッチンから始める環境学習:食品ロス削減の簡単なステップ
家庭での食事準備は、日々の生活において欠かせない営みです。特に小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、限られた時間の中で栄養バランスを考え、かつお子様が喜んでくれる食事を用意することに日々心を配っていらっしゃることと思います。
一方で、食品ロス、すなわちまだ食べられるのに捨てられてしまう食品が世界中で大きな問題となっています。日本では年間約523万トンもの食品ロスが発生しており、その約半分は家庭から出ているとされています(農林水産省、令和3年度推計)。この食品ロスは、食材を生産する過程での環境負荷だけでなく、ごみを処理する際にも温室効果ガスを排出するなど、地球環境に様々な影響を与えています。
「こども地球ごはん教室」では、食の楽しさを伝えながら、同時に地球環境の大切さも学ぶ機会を提供することを目指しています。今回の記事では、忙しい毎日の中でも無理なく取り組める食品ロス削減の具体的な方法をご紹介し、それがどのように子どもたちの食育や環境への意識向上につながるのかを解説いたします。
家庭で取り組む食品ロス削減の基本的な考え方
食品ロスを減らすための第一歩は、「買いすぎない」「使いきる」「出し切る」の3つの意識を持つことです。これは特別な知識や技術を必要とせず、日々のちょっとした工夫で実践できます。
1. 計画的な買い物と冷蔵庫チェック
週末にまとめて買い物をされるご家庭も多いことでしょう。買い物の前に冷蔵庫の中をチェックし、現在ある食材や使い忘れそうなものがないか確認する習慣をつけましょう。これにより、重複購入や、期限が近い食材の把握ができます。
購入する際は、週の献立を大まかに決めておくと、必要なものを必要なだけ買う手助けになります。これは忙しい中では難しいかもしれませんが、例えば「月曜日はカレー」「火曜日は魚料理」といったように、中心となるメニューだけ決めておくことから始めても良いでしょう。
2. 食材を無駄なく使いきる工夫
購入した食材を使いきるための工夫は多岐にわたります。
- 適切な保存: 野菜や果物は種類に応じて適切な温度や湿度で保存することで鮮度を保ち、長持ちさせることができます。例えば、葉物野菜は湿らせたキッチンペーパーで包んで保存袋に入れる、根菜は土がついたまま新聞紙に包んで冷暗所に置くなどです。
- 使いきりレシピ: 中途半端に残った野菜やきのこ類は、まとめてスープや炒め物、お味噌汁の具にするなど、使いきりやすいレシピに取り入れましょう。インターネット上には、様々な残り物活用レシピが公開されています。
- 下処理と冷凍保存: 忙しい時にすぐに使えるよう、きのこ類をほぐして冷凍したり、刻んだネギを冷凍したりしておくと便利です。購入後すぐに下処理をしておくことで、いざ使う時にスムーズに調理でき、食材の鮮度を保つこともできます。
3. 残った料理や食材の活用
食事を作りすぎたり、食材の一部が余ってしまったりした際にも、無駄にしない方法はあります。
- リメイク料理: 前日のカレーをカレードリアにする、残ったお惣菜を卵焼きの具にするなど、少し手を加えることで全く別の料理に生まれ変わらせることができます。これにより、飽きずに美味しく食べきることができます。
- 野菜くずの活用: 大根や人参の皮、ネギの青い部分などは、捨てずに野菜だしとして活用できます。これらを煮出すことで、風味豊かなスープのベースになります。
- 葉や茎の活用: 大根やカブの葉、ブロッコリーの茎なども、きんぴらや炒め物、お味噌汁の具として美味しく食べられます。栄養も豊富に含まれています。
食品ロス削減が子どもたちの食育につながる理由
これらの食品ロス削減の工夫は、単に環境負荷を減らすだけでなく、子どもたちの食育においても重要な学びの機会となります。
- 食べ物への感謝の気持ち: 食材を大切に使いきる過程を見せることで、「食べ物は簡単に手に入るものではなく、大切にしなければならない」という意識が育まれます。
- 命をいただくことの理解: 肉や魚はもちろん、野菜や果物もまた、生命の恵みであることを伝えます。残さず食べることは、その命を無駄にしないことにつながるという話をすることもできます。
- 工夫する力の育成: 限られた食材や残った料理を美味しく変身させる様子を見せることは、「ないものをあるもので補う」「工夫することで新しいものが生まれる」といった創造力や問題解決能力を育むきっかけになります。
- 環境問題への意識: 家庭での食品ロス削減が、地球温暖化やごみ問題といった大きな環境問題とつながっていることを、子どもにも分かりやすい言葉で伝えることができます。「食べ物を大切にすることが、地球を大切にすることにつながるんだよ」といったメッセージは、幼い心にも響くことでしょう。
子どもと一緒にできる簡単な実践
お子様と一緒に食品ロス削減に取り組むことは、貴重な親子の時間となり、食や環境への関心を高める良い機会です。
- 冷蔵庫の在庫チェックを一緒にする: 買い物リストを作る際に、お子様と一緒に冷蔵庫を開けて中身を確認してみましょう。「このキャベツは、次は何にして食べようか」などと声をかけることで、食材に関心を持つようになります。
- 野菜くずを使った出汁作り: 大根の皮など、普段捨ててしまう部分が美味しい出汁になる様子を一緒に観察します。食べられる部分が意外と多いことを知る驚きは、食材を大切にする気持ちにつながります。
- 残った料理のリメイクを一緒に考える: 「昨日のカレー、今日はどうやって食べようか」と問いかけ、一緒にアイデアを出すのも楽しいでしょう。
- 家庭菜園に挑戦: 小さなプランターでネギやミントなどのハーブを育て、使う分だけを収穫することは、食べ物の成長過程を学び、収穫の喜びを知るとともに、必要な分だけを使う意識を育みます。
まとめ
忙しい毎日の中で、完璧に食品ロスをなくすことは難しいかもしれません。しかし、今日ご紹介したような小さな工夫一つ一つが、積み重なることで大きな成果につながります。そして何より、これらの取り組みは、子どもたちに食べ物の大切さや環境への配慮を伝える絶好の機会となります。
「もったいない」という日本の古くからの精神を大切にしながら、ご家庭でできることから一歩ずつ始めてみませんか。キッチンでの日々の営みが、お子様にとって食の楽しさと地球環境の大切さを学ぶ豊かな時間となることを願っています。