コップ一杯から始まる食育:飲み物が教えてくれる体と環境のこと
私たちの日常に欠かせない飲み物。水分補給はもちろんですが、実は飲み物も食の大切な一部であり、様々な学びの機会に満ちています。コップ一杯の飲み物から、子どもと一緒に体と環境について考える食育を始めてみませんか。
いろいろな飲み物、どこから来るのでしょう?
普段、私たちは何気なく様々な飲み物を手にしています。しかし、その一杯がどこから来て、どのように作られているかを知ることは、子どもにとって大きな発見となります。
- 水: 私たちが飲む水は、山や森に降った雨や雪が地下に蓄えられたり、川となって流れたりしたものです。安全な水道水は、浄水場で様々な工程を経てきれいにされています。ミネラルウォーターは特定の水源から採られた水です。
- 牛乳: 牛乳は、牧場で育てられている牛が出してくれます。牛は草や特別な飼料を食べて育ち、健康な体を維持しています。
- ジュース: 果物や野菜を絞ったり加工したりして作られます。どのような果物や野菜が使われているか、どこで採れたものかによって、味や栄養が異なります。
- お茶: 茶葉から作られます。茶葉は特定の地域で栽培され、摘み取られた後に乾燥や発酵などの加工を経て、私たちが飲むお茶になります。
それぞれの飲み物には、こうした長い道のりがあります。子どもに伝える際は、絵本や写真を見せたり、「牛さんがね」「このみかんからできてるんだよ」といった具体的な言葉を使ったりすると、興味を引き出しやすくなります。
飲み物と私たちの体
飲み物は体の水分バランスを保つために不可欠です。人間の体は約60%が水分でできており、水分が不足すると様々な不調が起こります。水はもちろん、牛乳は骨や歯を作るカルシウム、果物ジュースはビタミンなど、飲み物には体に必要な栄養素が含まれているものもあります。
一方で、糖分を多く含む清涼飲料水などを摂りすぎると、虫歯や体重増加の原因となる可能性も指摘されています。どのような飲み物を、どのくらい飲むのが良いかを考えることは、自分の体を大切にする食育につながります。
飲み物と地球環境
飲み物は私たちの体だけでなく、地球環境とも深く関わっています。
- 容器: ペットボトル、紙パック、缶といった飲み物の容器は、製造にエネルギーや資源を使い、使い終わった後はごみとなります。適切にリサイクルされなければ、環境への負荷となります。マイボトルや水筒を使うことは、ごみを減らす効果的な方法です。
- 生産: 牛乳を得るためには牛を育て、飼料を生産し、水を消費します。ジュースや茶葉の栽培には、水や肥料が使われることがあります。それぞれの飲み物が作られる過程で、地球の資源が使われていることを意識することは大切です。
- 輸送: 遠くの国や地域で作られた飲み物を運ぶためには、船やトラック、飛行機が使われ、エネルギーを消費し、CO2を排出します。地元の牛乳や地域で採れた果物を使ったジュースなど、近くで作られたものを選ぶ(地産地消)ことは、こうした環境への負荷(フードマイレージと呼ばれる考え方に関連します)を減らすことにつながります。
忙しい毎日でできる、飲み物から始める食育の実践アイデア
忙しい日々の中でも、飲み物から食育と環境への配慮を両立する簡単な方法はたくさんあります。
- マイボトル・水筒の活用: 外出時だけでなく、家庭でもマイボトルを使う習慣をつけることで、ペットボトルなどのごみを減らせます。中身は麦茶や水などを用意しておけば、経済的でもあります。子ども用の水筒を一緒に選ぶのも良いでしょう。
- 水道水を見直す: 日本の水道水は安全に飲むことができます。浄水器を使ったり、一度沸かしてから冷ましたりすることで、手軽に活用できます。
- 飲み物の選び方を意識する: スーパーで飲み物を選ぶ際に、どんな容器に入っているか、どこで作られているか、原材料は何かなどを子どもと一緒に見て話してみましょう。「このパックはリサイクルマークがあるね」「このジュースは〇〇県で作られたみたいだよ」といった声かけが学びになります。
- 飲み残しをなくす工夫: 飲む量を自分で決めさせることで、「飲み切る」意識を育みます。コップに入れる量を調整したり、少しずつ注いだりするのも良い方法です。残ってしまった飲み物があれば、例えばジュースをゼリーにするなど、別の用途に活用できないか親子で考えるのも食育になります。
- 一緒に手作りする: 自宅で麦茶を煮出す、レモンを絞ってハチミツレモンを作るなど、簡単な飲み物作りを子どもと一緒に体験することで、素材やつくり方への関心が高まります。
まとめ
コップ一杯の飲み物は、単に喉の渇きを潤すだけでなく、私たちの体への影響、そして地球環境とのつながりを学ぶための入り口となり得ます。忙しい毎日の中でも、マイボトルを使ったり、飲み物の容器や産地を少し気にしたりするなどの小さな工夫から、子どもと共に食の大切さと環境への配慮を育むことができます。日々の食卓の飲み物を通して、豊かな学びと環境への優しい気持ちを育んでいきましょう。