こども地球ごはん教室

「見えない水」から学ぶ食育:食べ物と環境のつながり

Tags: 食育, 環境問題, 水資源, バーチャルウォーター, 食品ロス削減

はじめに

私たちが日々口にする食べ物は、多くの恵みによって育まれています。太陽の光、豊かな土壌、そして欠かせないのが「水」です。しかし、食べ物が私たちの食卓に並ぶまでにどれくらいの水が使われているのか、意識することは少ないかもしれません。この、製品が生産・加工される過程で消費される水のことを「見えない水」、あるいは「バーチャルウォーター」と呼ぶことがあります。

この記事では、「見えない水」という視点を通して、食べ物と環境の深いつながりを探り、忙しい毎日の中でも親子で実践できる食育のヒントをご紹介します。食べ物への感謝の気持ちを育み、環境への配慮について考えるきっかけとなれば幸いです。

「見えない水(バーチャルウォーター)」とは

「見えない水」とは、農産物や畜産物を育てるため、あるいは工業製品を生産するために使われる水の総量のことを指します。たとえば、食用の穀物を育てるためには雨や灌漑用水が必要ですし、家畜を育てるためには飲み水や飼料を育てるための水が大量に必要となります。これらの水は、最終的な製品である食べ物や製品そのものには含まれていないため、「見えない水」と呼ばれます。

国際的な目安として知られる例では、牛肉1kgを生産するために約20,000リットル、米1kgを生産するために約3,600リットルの水が使われるとされています(数値は算出方法により異なります)。このように、私たちが当たり前のように消費している食べ物の裏側には、膨大な量の水が利用されているのです。

なぜ「見えない水」を意識することが大切なのか

食べ物を生産するための水利用は、地球の水資源や環境に大きな影響を与えています。

環境への影響

「見えない水」の消費量が多い食べ物の生産を支えることは、これらの環境問題と無関係ではありません。私たちがどのような食べ物を選び、どのように消費するかが、地球の水環境に影響を与えていることを理解することは重要です。

食育の視点

「見えない水」について知ることは、子どもたちの食に対する意識を高める食育の機会となります。

親子で取り組む「見えない水」に関する食育ヒント

忙しい日常の中でも、親子で「見えない水」と食、環境のつながりについて考える機会を持つことは可能です。手軽にできる具体的なヒントをご紹介します。

  1. 絵本や図鑑で水の旅を知る: 食べ物や植物に関する絵本、水の循環に関する図鑑などを一緒に読みながら、「お野菜やお米が育つにはお水がたくさんいるんだね」と会話をしてみましょう。水道から出る水だけでなく、川や雨など、食べ物に必要な水がどこから来るのかに想像を広げます。
  2. 食事中の簡単な声かけ: 食事中に、「このお味噌汁のお豆腐、お豆からできているんだよ。お豆も育つのにお水を使うんだって」のように、身近な食べ物と水とのつながりについて簡単な言葉で話してみましょう。難しい説明は不要です。
  3. 水道の節水とリンクさせる: 日常生活での手洗い、歯磨き、お風呂などで水を大切に使うことの重要性を伝える際に、「私たちが使うお水も、食べ物を作るためにも必要なお水なんだよ」と優しく伝えてみましょう。家庭での節水が、地球全体の水資源を守ることにつながることを示唆します。
  4. 地産地消を意識する: 地元で採れた旬の食材を選ぶことは、輸送にかかるエネルギーや水を減らすことにつながります。一緒に近所の直売所に行ってみたり、「このお野菜は近くの畑でできたんだって。遠くから運んでくるより、運ぶのに使うお水やエネルギーが少なくて済むんだよ」と話してみるのも良い方法です。
  5. 食品ロスを減らす工夫を共有する: 食べ残しを減らすこと、余った食材を別の料理にリメイクすることは、食べ物に使われた「見えない水」やその他の資源を大切にすることに直結します。「このご飯粒も、育つためにたくさんのお水を使っているから、残さず美味しく食べようね」といった声かけは、食べ物を大切にする意識を育みます。

まとめ

食べ物と「見えない水」、そして環境のつながりについて考えることは、食への感謝と地球への配慮を同時に育む大切な食育です。完璧を目指す必要はありません。日々の食卓やキッチンでの小さな声かけや工夫から始めてみることが重要です。

「見えない水」という視点を持つことで、いつもの食べ物が、私たちが暮らす地球やそこで暮らす多くの命とつながっていることを感じられるようになります。この気づきが、持続可能な未来に向けた食との向き合い方を親子で考える一歩となることを願っています。