食事記録から始める食育:無理なく楽しく食べ物と環境のつながりを学ぶ
食事の記録と聞くと、栄養計算をしたり、細かくメモを取ったりと、少し面倒なイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日々の食事を少しだけ記録することは、実は手軽に始められる食育であり、食べ物と環境のつながりを学ぶ上でも役立つことがあります。
忙しい日々の中で、子どもの好き嫌いや偏食に悩みながら、食育や環境への配慮に関心はあるものの、具体的な実践方法が見つからないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。食事記録は、そうした状況において、無理なく、そして楽しみながら取り組める一つのアプローチです。
食事記録が食育につながる理由
食事記録は、日々の食卓を客観的に振り返る機会を与えてくれます。
- 栄養バランスの把握: 何をどれだけ食べたかを記録することで、意識していなかった栄養の偏りや、特定の食品群の不足に気づくことがあります。完璧なバランスを目指すのではなく、「今日は野菜が少なかったかな」「タンパク質は足りているかな」といった大まかな把握でも、食卓の改善に繋がります。
- 好き嫌いや偏食の傾向把握: 子どもが何をよく食べ、何を避ける傾向があるかを記録することで、具体的な好き嫌いのパターンが見えてきます。これにより、なぜ食べないのか、どのような調理法なら食べる可能性があるのかといった、より踏み込んだ対策を考えるヒントになります。
- 食への関心を深める: 今日食べたものを記録する行為そのものが、食べ物について考えるきっかけとなります。「これ、何からできているんだろう」「どこから来たのかな」といった興味は、自然な食育へと繋がっていきます。
食事記録が環境への配慮に役立つ理由
食事記録は、日々の食事がどのように環境に影響しているかを考える出発点ともなり得ます。
- 食品ロスの見える化: 食べ残しや、使いきれずに傷んでしまった食材を記録に残すことで、家庭で発生している食品ロスの「量」や「種類」を具体的に把握できます。何が原因で食品ロスが発生しているのかが見えることで、今後の買い物や献立計画の改善に繋がります。
- 献立計画や買い物との連携: 記録を基に、購入した食材を計画通りに使えているか、無駄がないかを確認できます。これにより、必要なものを必要なだけ買う意識が高まり、結果として食品ロス削減に貢献します。
- 旬や地産地消への意識: 記録を見返す中で、どのような食材が食卓に登場しているかを振り返ることができます。季節の食材や地元の食材の登場頻度を意識することは、旬や地産地消への関心を高め、環境負荷の低い食生活への気づきを促します。
忙しい親でもできる簡単な食事記録の方法
特別な道具や時間は必要ありません。手軽に続けられる方法を選びましょう。
- スマートフォンのカメラで撮影: 最も簡単な方法の一つです。毎食、食卓全体の写真を撮るだけでも、後で見返した際にどのような食事だったかを思い出せます。後でメモを付け加えることも可能です。
- シンプルなメモ: ノートやスマートフォンのメモ機能に、食べたものや食品ロスになったものを箇条書きで簡単に記録します。「朝:ごはん、みそ汁(わかめ)、卵焼き」「夜:カレーライス(人参少し残し)」のように、最低限の情報で構いません。
- 食育アプリの活用: 食事記録機能を持つ食育アプリも増えています。入力が簡単なものや、写真で記録できるものなど、使いやすいものを選んでみるのも良いでしょう。
- 子どもと一緒に絵やスタンプで記録: 少し余裕のある日には、子どもと一緒に食べたものを絵に描いたり、好きな食べ物にスタンプを押したりするのも楽しい方法です。これは記録する行為そのものを遊びに変え、子どもの食への関心を高めることにも繋がります。(この記録は親が内容を補足して環境や栄養の視点から振り返る際に活用します。)
完璧な記録を目指す必要はありません。まずは1日1食からでも、数日おきでも、できる範囲で始めてみることが大切です。続けることで、少しずつ日々の食卓の傾向が見えてきます。
食事記録を子どもとの学びにつなげる
記録した内容は、子どもと食について話す良いきっかけになります。
- 「これ、いつ食べたものだっけ?」と振り返る: 写真やメモを見ながら、子どもに「この人参、甘かったね」「この魚はどこで獲れるのかな?」などと話しかけてみましょう。食事の記憶を呼び起こし、食べ物への興味を引き出します。
- 食品ロスになったものについて話す: もし食べ残しなどを記録していたら、「どうして残しちゃったかな?」「次はどうしたら全部食べられるかな?」と、責めるのではなく、優しく問いかけてみましょう。食べ物を大切にすることの意味を考える機会になります。環境への影響についても、「食べ物が無駄になると、地球も悲しむんだよ」など、分かりやすい言葉で伝えてみることができます。
- 旬の食材を探す: 記録の中で特定の季節によく登場する食材があれば、「このいちごは春にたくさん食べたね。夏にはどんな果物が出るかな?」と話すことで、季節と食べ物のつながりを学ぶことができます。
食事記録は、単なる記録行為に留まらず、親子のコミュニケーションツールとして、また食べ物と環境について深く考えるための羅針盤としても活用できます。
まとめ
日々の食事を記録することは、忙しい方でも工夫次第で手軽に始められる食育の一歩です。記録を通じて、日々の食卓の栄養バランスや子どもの好き嫌いの傾向を把握できるだけでなく、家庭内の食品ロスを具体的に知り、環境への配慮を意識するきっかけにもなります。
写真一枚、簡単なメモからでも構いません。無理なく続けることで、食の楽しさや食べ物への感謝の気持ち、そして食べ物と環境の密接なつながりについて、親子で無理なく学ぶことができます。今日から、小さな食事記録を始めてみてはいかがでしょうか。