こども地球ごはん教室

食べ物が「届く」までの食育:見えない旅から学ぶ環境と感謝

Tags: 食育, 環境, 食べ物の旅, 地産地消, 輸送

私たちは日々の食事を通じて、さまざまな食べ物と向き合っています。食卓に並ぶ彩り豊かな食材や料理は、当たり前のように手に入ると感じがちですが、それらは皆、遠く離れた場所から長い旅を経て私たちの元に届けられています。この「食べ物が届くまでの道のり」、つまり輸送や物流のプロセスを知ることは、子どもたちの食に対する見方を深め、環境への意識を育む重要な食育の機会となります。

忙しい daily life の中で、こうした見えない部分に目を向けることは難しいかもしれません。しかし、私たちが口にする一つ一つの食べ物が、どのように生まれ、どのように運ばれてくるのかを知ることは、子どもたちが食べ物への感謝の気持ちを育み、地球環境への配慮を考える第一歩となるのです。

この記事では、食べ物が食卓に届くまでの「見えない旅」に焦点を当て、それが食育と環境にどのようにつながるのか、そして忙しい中でも親子で取り組める実践的な方法についてご紹介します。

食卓に届くまでの「食べ物の旅」とは

スーパーマーケットや八百屋さんに並ぶ野菜や果物、お肉やお魚、お米や加工食品など、様々な食べ物があります。これらの食べ物の多くは、私たちの家から離れた場所で生産されています。例えば、りんごは青森県から、お米は新潟県から、お肉は遠く離れた海外から運ばれてくることもあります。

食べ物が生産地から消費地である私たちの食卓まで運ばれる過程には、様々な手段が使われます。畑で採れた野菜はトラックで集荷場へ運ばれ、市場を経由してスーパーに届けられます。漁港で水揚げされた魚は冷凍されて輸送され、加工されて店頭に並ぶこともあります。海外からの食材は、船や飛行機で港や空港に到着し、そこから国内の輸送網を経て各店舗に配送されます。

この一連の流れには、多くの人が関わり、様々なエネルギーが使われています。子どもたちにとっては、普段目にすることの少ない、食べ物の舞台裏とも言える世界です。この見えない「旅」を知ることで、食べ物が単に「そこにあるもの」ではなく、多くの手間と時間をかけて届けられているものであることを理解するきっかけになります。

「旅」が環境に与える影響を考える

食べ物が長い距離を移動する際には、輸送手段(トラック、船、飛行機など)から二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが排出されます。これは地球温暖化の一因となります。また、食べ物を安全に届けるためには、様々な包装材や容器が使用されますが、これが適切に処理されないとプラスチックごみなどの環境問題を引き起こす可能性があります。

食べ物が生産地から消費地まで輸送される距離が長ければ長いほど、輸送にかかるエネルギーや環境への負荷は大きくなります。この輸送距離と環境負荷の関係を示す指標の一つに「フードマイレージ」があります。これは、食料の「輸送量(t)」と「輸送距離(km)」をかけた値で表されます。フードマイレージが大きい食品ほど、輸送にかかる環境負荷が大きいと考えられます。

もちろん、全ての食品を近くで生産することは難しい現実もあります。しかし、こうした輸送に伴う環境への影響について知ることは、私たちが日々の買い物でどのような選択をするか、そしてそれが地球環境にどのように繋がるのかを考える上で非常に重要です。

忙しい毎日でもできる!親子で学ぶ実践的なヒント

食べ物の輸送や環境への影響について学ぶことは、難しく考える必要はありません。忙しい daily life の中でも、親子で一緒に楽しみながら取り組める簡単な方法がいくつかあります。

1. スーパーで「どこから来たのかな?」と話してみる

買い物の際に、野菜や果物に貼られている産地表示を親子で見てみましょう。「このりんごは青森県から来たんだね」「このお魚は北海道からかな」などと話しながら、それぞれの産地がどこにあるのか、地図で調べてみるのも良いでしょう。日本のどこなのか、あるいは海外のどこなのかを知ることで、食べ物が遠くから運ばれてきたことを実感できます。

2. 地元の食材を選んでみる

近くの農産物直売所や、スーパーの地産地消コーナーを利用してみましょう。地元の食材を選ぶことは、輸送距離が短いため環境への負荷を減らすことにつながります。また、地域で採れた旬の食材は新鮮でおいしいだけでなく、その地域の食文化を知るきっかけにもなります。「この野菜、〇〇さんの畑で採れたんだって」のように、生産者の顔が見える場合もあり、食べ物への親近感が増します。

3. 簡易包装の商品や量り売りを選んでみる

環境への負荷を減らすためには、過剰な包装を避けることも大切です。例えば、ばら売りの野菜を選んだり、エコバッグを持参したりするなどの小さな行動も、輸送や販売の過程で発生するごみを減らすことにつながります。一部の店舗では、ナッツやドライフルーツなどの量り売りも行われており、必要な分だけ購入することで食品ロス削減にも繋がります。

4. 食べ物を大切にする気持ちを育む

食べ物が遠い場所から、多くの人の手を経て運ばれてきたものであることを知ると、「この食べ物を無駄にしたくない」という気持ちが自然と生まれてきます。食べ残しを減らす工夫や、食材を最後まで使い切るアイデアを実践することは、輸送に関わる環境負荷だけでなく、食品ロスによる環境問題の解決にも繋がります。

好き嫌いへのヒント

食べ物の産地や、どのように運ばれてくるのかといった背景を知ることは、子どもが特定の食材に興味を持つきっかけになることがあります。「このブロッコリーは、遠くの畑からパワーをもらって運ばれてきたんだね」のように、食べ物のストーリーを伝えることで、苦手意識が和らぐ可能性も考えられます。

まとめ

食べ物が私たちの食卓に届くまでの「見えない旅」には、食育と環境について学ぶための大切なヒントが隠されています。輸送や物流の仕組み、それが環境に与える影響について親子で一緒に考えることは、子どもたちの食べ物への関心を深め、地球環境への配慮を促す良い機会となります。

忙しい毎日の中でも、スーパーでの買い物中に産地を意識してみたり、地元の食材を選んでみたり、といった小さな行動から始めることができます。こうした一つ一つの実践は、子どもたちが食べ物への感謝の気持ちを育み、持続可能な社会の担い手として成長していくための確かな一歩となることでしょう。食卓を通じて、食べ物の旅に思いを馳せ、地球に優しい選択を積み重ねていくことを願っています。